Documents/GUIのチュートリアル/StepA5CueMol: Molecular Visualization Framework |
分子の重ね合わせ二つの分子を,できるだけ重なるように (厳密には指定した各原子間の距離の二乗和が最小になるように) 移動することができます. 進化的に近縁の蛋白質同士を比較する場合などに便利です. Version 1.0.0での実装では,どの原子とどの原子を重ねるかを 手動で正しく設定してやらなければなりません. もともと配列が同じもの同士を重ね合わせるのは簡単ですが, homologue同士などを配列アラインメント等から重ねあわせるのは, 少々骨が折れます. LSQ fittingダイアログで重ねる原子を指定して実行まず例としてHuman p21 RasのGTP結合型(1QRA)と GDP結合型(4Q21) を重ね合わせてみます. 先ず,両者の構造をtrace rendererで表示させて, 見やすいように色も変えておきます. さらに,Naviパレットやファイルの中身を直接見ることで,
をチェックしておきます.今回の場合は
です. メニュー"Tool"→"Fit two molecules"で,LSQ fittingダイアログが表示されます. まず,どちらを基準(reference)にして,どちらを動かすか(moving)にするかを決めます. この例では,1QRAは固定して,4Q21を動かして重ねあわせを行うことにしますので, 上下それぞれのMol:の横にあるドロップダウン・コンボボックスからオブジェクト名を 選んでください. さらに,Reference, Movingとも, ラジオボタンがSelection(...)を選択した状態にして, エディットボックスに文字が入力できる状態にします. そして,各エディットボックスに重ね合わせる部分を指定する選択文を入力します(選択文の文法に関しては分子選択文のリファレンス参照). ここでは,上記で示したように
と入力しています. そしてOKボタンを押すと最小二乗重ね合わせが実行されます. さらに,Output windowには以下のようにr.m.s.d.(=root mean square deviation; 小さいほどよく重なっている)が表示されます. LSQ fit> RMSD 1.466300 重ね合わせのエラー最小二乗重ね合わせを実行する場合,当たり前ですが,両者の重ね合わせるべき原子が一対一に対応してなければなりません. なので,もし選択文を間違えて,一対一に対応付けできない(つまり選択を評価した結果選ばれた原子の数がreferenceとmovingで違ってしまった)場合は,エラーになります. LsqFit> Reference mol(4Q21[1]) nsel (78) != Fitting mol(1QRA[1]) nsel (227) nselのあとの括弧の中の数がそれぞれ選択された原子の数で,それが違うので重ね合わせることができないということです. あと,選択文が誤っていてもたまたま原子数が一致してしまった場合は,CueMol側では知る由もないので変な原子を対応させて無理に重ね合わせてしまいます. こういう場合は大体r.m.s.d.値が変になったり, 結果が明らかに変になるのでわかると思います. Sel1/Sel2パレットで選択しておいて重ね合わせるLSQ Fittingダイアログで選択文を記述して重ね合わせるのは, インタラクティブに選択が実行できないので, 結構面倒です. そこで, 普通にSel1/Sel2パレット等でreference/movingの原子をそれぞれ選択しておいて 重ね合わせることも可能です. ここでは,GTP/GDP結合で構造が変わらない部分のみに対して重ねあわせを実行してみます. 全体を重ね合わせた結果を見ると,残基番号1〜29, 75〜166で重ね合わせればよさそうです. Sel2パレットに*.1:29,75:166.CAと入力し,1QRA,4Q21両者ともにこの選択を適用してやります. 具体的には,上図のように入力し,Molコンボボックスで1QRAを選んでselectボタンを押し,同様に4Q21を選んでselectを押します. このケースでは蛋白のchainがそれぞれ1つしかないのでこれでうまくいきますが, 大概はCA原子を持つ他のchainがあって残基番号がかぶっていたりするので, reference/moving分子それぞれに選択文を指定してselectしてやる必要があるでしょう. 上図のように正しく選択されていることを確認したうえで,Fit two molecules...メニューを実行します. 今回はラジオボタンのUse current selectionの方が選択されている事を確認し, reference/movingの分子オブジェクトを指定してOKを押します. Switch region以外はほとんど構造は同じようです. r.m.s.d.値も非常に小さくなりました. LSQ fit> RMSD 0.488393 注意点・問題点(バグ?)重ね合わせるべき原子の対応付けですが,選択文に書いた残基の順に,それぞれ重ね合わせられているわけではありません.なので,
と書いても,
が重ねあわされるわけではありません.
が重ねあわされる結果となります. 原子の対応付けは,以下のような手順で行われます.
したがって,選択文をどういう表現で書いたとしても,結果として選択される原子の集合が全く同じなら,全く同じ原子を対応させて重ね合わせるようになるので,重ね合わせの結果も同じになります. 以上のような仕様のため,選択している原子のうち,一部の残基中に欠損している原子があると,意図しない対応付けになってしまう可能性があります. (例えば,CA(Cα),CB(Cβ)原子で重ね合わせようとしたとき,reference側の一部の残基のみ側鎖がCB以降かけている場合は,その残基から対応付けがずれてしまいます.) |